こもれび 2024(2)

 こもれび 2024(2)

 

曲水の宴

・新緑の城南宮へ行く午後の天気を気にしつつ ゆく

・いにしへの曲水の宴繙くと 城南宮へ高まる期待

・新緑のまばゆき城南宮の庭午後次第に雲低くなる

・永和九年三月花咲く蘭亭に觴(さかづき)飛ばすと「蘭亭序」あり

・古の平安絵巻見まほしく曲水の宴の庭に連なる

・雪の上は十二単では歩かぬだらう裳裾捧げて侍女が付き来る

・春雨は樹木を濡らし苔濡らす 静かに歌は仕上げられゆく

・祭神に奉げらるる曲水の今年の歌が耳より零る

 

・珍しき曲水の宴見ま欲しく当選したれば京都へぞゆく

・新幹線座席予約はネットにてあれこれ詰まりスイスイ行かず

・予約しえし切符を駅に取りに行く券売機操作(タッチパネル)も難関である

 

トルコ旅行

・トランジット待つ上海空港に「防炎仮面(マスク)」見つけてぎょっとする

・東京より円弧を描きし位置情報中国上空ぱたりと途切る

・位置情報途切れしままにいづこへと飛ぶや飛行機 闇の中

・難民を生む国あり二百三十万人受け入るる国あり尊し平和

・カッパドキア見下ろす丘の売店にガラスの目玉あまたが売らる

・トルコ石ならぬお守り目玉たち 旅の安全祈願してみる

・カッパドキア見下ろす丘の売店の目玉たち木にくくられてゐる

・トルコ人の商売上手に乗せられて買ひし絨毯我を潤す

・得意技は人にはありて自慢げに値切りの武勇伝聞かされにけり

・十日ほど留守にせし間に蔓は伸びテンヤワンヤの豌豆の蔓

 

今どきの仕事

・面(おも)を伏せ草引きをれば涼やかなカッコーの声耳は待ちをり

・幕張メッセ壇上の子 今どきの仕事の一端スマホに見せらる

・スティーブ・ジョブスみたいだ Tシャツとジーンズ姿マイクを握り

・ころころと聞き慣れぬ声しきりなり 知る人誰か来ぬか立ち止まる

・ひょっこりと道に出でこしカモシカの銀ねずの毛が目に沁みをり

・これ以上森に近づくな諭すがにカモシカ我を見つめてをりぬ

 

朝寝坊

・朝寝坊の我ら家人起きぬとも朝顔は咲きナイーブな心震はす 

・猛暑日の暑さに負けし野菜たち蒸れたる葉の下ダンゴ虫寄る

・土踏まずなき幼子の足音がペタペタとして賑はふ数日

・「おばあさ~ん」階下の孫が探すから我一瞬に「おばあさん」

・草引きをする傍らに葉を閉ぢて神妙なるかな小蜜柑草は

・つくづくと我は縄文の女なり毬栗拾い鬼皮を剥き

・収穫に追はれる幸ひ栗の毬剥きつつ聞きぬ 蟋蟀が声

 

・ベランダに洗濯物多く干しあれば賑はふ如し家族の姿

・葛の蔓下界に伸びてあまりあり 電力むさぼるごときAI

・しし唐も茄子も茗荷も収穫す今宵は天婦羅心しはやる

 

夜神楽

・鎮守の杜晴れやかにして秋空に神楽囃子がリズムを刻む

・なつかしき記憶の底の里神楽杖もつ老爺種蒔きてをり

 

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