こもれび 2024(1)
こもれび 2024(1)
羽村の堰
・古多摩川蕩蕩(たうたう)と流れたり武蔵野の谷深く刻める
・なにとなく秋とはなりぬ身に痛きほどまばゆき羽村の堰は
・江戸の世へタイムスリップ玉川兄弟のやうな政治家をるか きびし
・秋の日はキラキラとして多摩川にセンダングサが実を結びをり
・横田基地ゆ爆音とともに飛び立ちしオスプレイ 睥睨の機
・若駒は一歳となる 祈願して市民フェスにて蜜柑の木求む
スーパーSEIYU (23.10閉店)
・子育てと共働きなる人生を支えてくれたSEIYU閉店す
・身の丈に合ひたるSEIYU閉店す 藪から棒の買ひ物難民に
・42年を共に歩みしSEIYUをみとりてこれからどうする どうする
・折々の星空見上げて車中より車上映画を楽しみしことあり
・我が人生に思い出数多共有す ざSEIYUの扉が閉まる
・いつもなら「開いててよかった」SEIYUの扉が閉まる までを見送る
・丸き目を剥きだすやうに乗り出して「見て聞き喋る」秩父三猿
・植木屋が八時前に来てさくさくと剪定始む手際よき音
そこらの草(「飛んで埼玉2」の映画に寄せて)
・埼玉県民はそこらの草でも食べてをれ リフレインするそこらの草も
・七草なづな唐土の鳥がと口ずさめばそこらの草がよみがえる春
・あら玉の年の初めのお年玉多寡を気にせり見送りてより
・紅白のきれいな蟹がお勧めと蟹尽くしなる今年のお節
・歯形取るとぐにゃりとしたもの口に入る 俎上の鯉魚と観念をして
・お雑煮もおせち料理も懸念なく食べるべし インプラントが入る
こてまる
・「こてまる」は小手指への通行手形 遊び心に灯をともすなり
・ぬばたまの衣冠束帯の「こてまる」が公民館の玄関に待つ
・小暮晴彦氏(はるひこし)デザイン「こてまる」はレアなかはゆさ 振りまきてをり
・大人しき結香のための雛人形浅草橋まで足伸ばし来ぬ
・這ひ這ひて階段一段登りえし航佑一歳 「こてまる」五歳
・假屋崎省吾の生花見むと来てハートの屏風が浮き出て妙なり
・極彩色に彩色されたる桑枝ゆ 極楽鳥はいづこへゆきぬ
ピッコロ
・晴れ晴れと五輪のマーク見ま欲しく国立競技場花の聖火台
・天空のラピュタのやうな国立競技場コロナ禍にて夢のあとみる
・友どちとインテンスビルゆき覗き見す国立競技場隣なるビル
・四重奏始まりてすぐ目を閉ぢぬ軽快なロンド流れ出すなり
・ピッコロの音が心地よし 清らかに小鳥囀り遊ぶひととき
・おぼつかなき一歳児の足取りをはらはらと追ふ もたもたと老い
養蚕展
・養蚕の用語難し孵化(うか)蟻蚕(ぎさん) 毛蚕(けご)熟蚕(じゅくさん) 蛹(さなぎ)殺蛹(さつよう)
・お蚕を触りしことなし 養蚕展ボランティアガイドまだまだ不安
・養蚕の歴史の底をたどりつつ毛蚕全滅といふ資料ある
・大陸から養蚕高機(たかはた)織姫も来て 望郷の念極まる織姫
・松原の先に丸き海があり 海は膨張くり返しをり
・本物と見紛ふばかりのお蚕さま 疑似桑の葉を手に取り和む
カラムシ
・ひときは青草繁る田圃道 古代の畦がにじむそらなり
・イラクサ科「カラムシ」生えて夏日なり ここに初めて布織りし人はや
・「殻蒸し」て繊維採りたる草といふ 峩々たる青草これが「カラムシ」
・「殻蒸し」て繊維採りたる草なれば我ら親しく「カラムシ」と呼ぶ
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