こもれび 2023-2

 

こもれび 2023-2

 

藤祭り

・名にし負ふ亀戸天神藤祭り花房吹き上ぐ一陣の風

 

・藤棚の上にはスリムなスカイツリー 江戸名所図絵的シャッターチャンス

 

・土地勘のなき江東区太陽と相談しながら歩くことにする

 

・戸主の名を記せと役所が言ふから我が名ぞ惜しく届け出やめる

 

世の中に伍して働きこし自負あり戸主でなきとて却下されたり

 

・女性の地位さらに下がりて121位世界最低レベルの政治力

 

・いつもいつも踏みつけらるる民草よ 政治改革素振りなるらし

 

 シャクナゲ

・溶岩流流れし跡の大岩を踏み跨ぎ咲く シャクナゲ頑張れ

 

・孫3人長男次男の家族来て賑はふ見れば不思議な時間

 

・青大将毒持たぬゆゑ掴まれてその細き身をくねらせてゐる

 

・水晶の如く透き通る蛇の目にまだあどけなき少年を見る

 

・掴まれてゐるから蛇怖くない 後生のつとにヘビ撫でてみる

 

・すべすべとしたる幼き蛇の皮膚 柔らかすぎず冷たくもなし

 

・帰り来て深き疲れに気づきたり 未だ生々し蛇の感触

 

 コッペパン

・物のなき昭和の子どもコッペパン腹いつぱいに食べたき欲求を持つ

 

・買ひ食ひを父に叱られしコッペパン 今もあつぱれ商品並ぶ


・幼子に良き時代来よ 航佑が操縦する飛行機夢に見るなり

 

 祇園さん

・久方に新幹線で京都まで 祇園さん見ると乗りたる旅路

 

・草枕旅する心躍らせて車窓しまらく矩形の稲田

 

・長刀鉾塔誇らしく高くして 先頭を切り祇園さん来る

 

・君の好きな孟嘗君を載せてゐる函谷関鉾がむつつりとくる

 

・山鉾の窓に数多の囃子方鈴なりといふのがおかしく見ゆる

 

 この町に

・この町にファルマン通りプロぺ通り ノスタルジーは美しきなり

 

・浦町も土産物屋もなくなりてマンションのみがニョキニョキ育つ

 

・飛行場発祥の地と冠さるるこの地平と青空が好き

 

・飛行場の町なりし頃航空(こう)学校生(がくせい)の練習機あまた墜落す

 

・この町に殉難碑いくつ航学生の練習機あはれよく落ちにけり

 

・沖縄の苦をこそ思へ「返還は市民の願い」掲げて半世紀

 

・沖縄の苦をこそ思へ この町の地下深く米軍の通信基地

 

 どの部屋も

・どの部屋も覗きたがりし二歳児を連れて巡りぬばあばが役目

 

・二歳児の探求心抑へがたしお供となりて我は従ふ

 

・渡りゆくサシバ観測せむと立つ今日も立ちをるや秋空深し

 

・秋の畑ツルムラサキの首伸びて轆轤首となりたる愉快

 

・丈高くコスモス咲きぬキアゲハもツマグロヘウモンも蜜吸ひてゆけ

 

 森の手入れ

・森の手入れご苦労様といふやうにマヤラン咲きて顔を出したり

 

・雑木林に棲むものたちの息づかひ木洩れ日ゆれて揺れて明るし

 

・甲高き声に鳴きをる小鳥たち我ら仲間と思ひてをるか

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