こもれび(30)

 

トトロの森ボランティア

・サイハイラン オオバノトンボサウ マヤランと報恩の如き希少植物

・葉を持たぬ希少植物摩耶蘭のもののあはれは知る人ぞ知る

・何とまあ小さき梅笠草 五センチも地を這ふ定家蔓に負けるな

・かの人もトトロの森のボランティア現地にて知る逞しき顔

 

・まう決して五人揃うことはなし姉の出棺見送る寂し

・姉様と二人自転車に跨りて写真に微笑む幼き日ありき

・コロナ禍に延期延期を重ねたる娘の華燭ともあれ結願

・沖縄の空と海が青いからかりゆしウエアに咲く花が咲く

・不案内な地下鉄地下通路どこまで続く矢印を追ふ

・埒もなくたどる矢印見失ひここは三越デパートの中

・劣等感はひよんなことから湧き出でて銀座三越出口に迷ふ

  

・テキパキと片せるが性分(たち)横の物立てねばすまぬ人来て忙し

・白蝶が絡み合ひつつくるくると空へ昇るが(まんじ)(ともえ)飛翔とふ

・マップなくスマホ見よとふ夢の国取り残された一人となりぬ

・中空にタワーオブテラー カタラレル荒唐無稽を受け入れススム

・体ふはり浮きて奈落へ落つる(あひ)その緊張を胃の腑で受くる

・夢の国にもある季節感水路にはツワブキの黄が咲き盛りをり

・ああ なんたる時代錯誤 差別語のオンパレードだ 昭和の喜劇は

 

・生まれしより五黄の寅と揶揄されて揶揄されつぱなし負ひて生きをり

・九星と十二支との組み合わせ数列解けぬまま年改まる

・うかうかと我に三順の五黄の寅数列解けねば迷妄の日々

・身代わりの寅の黄ずらり欄干に置かれてめでたし 願のいろいろ

・戴きし青パパイヤが宝石のやうに思へて抱えて帰る

・若きらの永遠の時間に守られて幼はにこにこ宇宙食はむ

・忖度をして裁判沙汰にしたくない国 臭いものに蓋と決めこむ我も

 

・新しき名を持つ人が一人増ゆ息子と婚姻届けを掲げて

・札幌京都沖縄にテレワークいつまで新婚いつまでワーケーション

・お酒なしグレープジュースにて整へし我が田舎料理を味はひたまへ

・接待の華美な話ばかりするな心ばかりの家庭料理ぞこれ

・次回には何の料理にもてなさむ心ばかりは先走るなり

・東京湾クルージングの玉手箱開きて夢のフランス料理

・武蔵野の野道を行けば異国語を話す人らとすれ違ひたり

 

・軒低く下がりし白き氷柱あり 彩なす光そらさずに見る

・軒低く下がりし氷柱長くして 鬼入れまじ節分の夜

・年の数は食べられねど気分爽快 内なる鬼は素直となりぬ

・靴の底べろんべろんと剝がれたり 天邪鬼踏みつけてゆく

・いつどこに時間はゆきぬ 今日もまた焦る夕べぞ時間が足りず

・こんなにももろき平和よ 美しきキーウ壊され灰色廃墟

 

・森はまだ冬木なれども早春のウグヒスカグラに蕾色づく

・鶯の止まり木ならむ早春の山に鶯神楽の花咲く

・巣ごもりの虫戸を開くごとき日に農事初めと種芋探す

・一斉にスタートしたる農事なり後れを取りて種芋がなし

・ビニール紐一切使はぬ梱包を見事と思ふ昭和の手仕事

・もみ殻をざくざく分けてリンゴ箱底の林檎を探したりき

 

・天地みな桜花あふれ水玉の模様となりて地を楽します

・カラス二羽花の終はりし梅が枝に目を剥き枝を引きゐるところ

・巣作りのカラスならむ梅が枝を枯れ木とまがひ引きゐるところ

・射干玉の眼光鋭きカラス二羽 刃物のやうな(はし)をもてけり

・ロシア軍の侵攻やまず大統領(ゼレンスキー)の無精ひげ黒く日々伸びてゆく

・専守防衛の破片は落下す 人知れずその破片にて人家傷つく

・奴隷か隷属かはた大鷹ににらまれ逃ぐるムクドリの群れ

・蔓を刈り枝打ち払ふ四月の森その中に今キンラン咲きぬ

 

・掘削し読みゆくごとし語彙語釈調ぶるほどに湧く泉あり

・ふくよかな感性の人高野公彦七十九歳の『水の自画像』

神米(かめ)(がね)に牧水の歌碑ある理由訪ねてぞ来し 近郊農家

・牧水が山家の祖父を訪ねし時郭公鳴かむ遠近にゐて

・白妙のナニハイバラのごとき人 自戒するなり垣に咲くバラ

・良人は酒でも買ひにゆきたるか庭なる我を締め出して さて

 

・家電にも脱力したき瞬間あり明るく終了告ぐる電子音

・不揃ひなシュートの長さ柘植が枝の新芽の伸びが気になりだしぬ

・ふかふかの新芽揃える快感を想像しをり 脚立と鋏

・柘植の木の形崩さぬやうに刈る 弾力を持て弾き返し来る

・シムカード何かは知らずアマゾンが届かずと息子やきもきとをる

・シアトルで買ふからいいやと出でゆきし後に届きぬ 遅かりし由良

・自宅からちょつと外出するように外つ国へゆく 滞りなし

 

埼玉(さきたま)にラベンダー畑広ごりて富良野とみまがふ 比企丘陵

・紫の花穂うつくしきラベンダー風に吹かれてたましひなびく

・咲き始めがラベンダーの摘みごろと 初々しきに鋏を入れぬ

・丁寧に説明すると言つたでせう説明を待つ国葬の意図

・数々の疑惑のありて一つだに説明のなき ピエロの口は

・調整池が公園としてある東京 隣りの芝生羨むばかり

・隣接すれば見えてくる格差 お金なのかやる気なのか後はもうろう

 

・いそいそと離乳食作り襁褓替ふイクメンパパは我が息子なり

・妻と子を後部座席に座らせて息子にこにこ帰りゆきたり

息子()や孫が来ると言へば余念なし心弾みて昼餉の準備

・存分に夜の力をためてしか蜘蛛が()強く顔にかかりぬ

・日本の豊かなるもの種まかずとも生えくる自然 雑草といふ

 

・栗拾ひ来ると返信ありし娘に甘き渋皮煮用意して待つ

・丁寧に栗の渋皮剥くときに山の恵みにやすらぎ覚ゆ

・栗を干す這ひつくばつて手のひらで広ぐる時に母を思ひぬ

(戦争展)

・日本画家新井勝利の従軍絵「母艦に働く航空整備兵」

・はるかなる航空母艦「(じゅん)(よう)」に搭載機をらずと嘆く日本画家

・さはやかに手を振る艦上整備兵「ゼロ戦今、飛び立ちゆけり」

 

 

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