こもれび(23)

 こもれび(23) 2015


ゆ 2015

 

顔合はすこともなければ積もりゆく一人相撲の疑心暗鬼が

 

名を呼べばやはりかの人胡麻塩頭(ごましほ)が人ごみの中振り返りたり

 

世の中は疑似体験に満ちてゐる絶叫マシーンに心雀躍

 

ディズニーのお土産袋持つ人と深夜の電車に乗り合はせたり

 

昆虫の混入よりも何よりもレトルトパックの離乳食に驚く

 

立ち寄りて何もいらぬと言ふからに茶もださざりしこといたく悔ゆ

 

素つ気なき妹なるよ茶も出さず要件聞きて兄を帰せり

 

熱々の目刺しほど良き塩加減うましと思ふ今日節分会

 

恵方巻賑はふ売り場を通り抜け四匹入りの鰯を買ひぬ

 

大箱にパズルのごとく詰められて(ひひな)の道具あふれんとする

 

雛人形飾るも仕舞ふも胸一つ出さんか否か葛藤の末

 

やうやつとお雛様段に納まりぬ()(られ)供へて落ち着く気配

 

仕舞はずは云々言ふは世迷ひ言己落としめ苦しまむとす

 

雪の山獣の気配何もなし木に木の話聞かせて歩く

 

カテドラルそしてサクラダファミリアの百年後の現実を見る

 

コロンブス海を指さし立てりけりフロンティアこそ目指すものなり

 

ああこれがハルニレの木 欧州の春を彩る優しき緑

 

白き壁白き風車が立つ丘に黄の菜の花が群生しをり

 

ラマンチャの丘の上の青空がドン・キーホーテ産みしと思ふ

 

図書館の隣の席の若者が問題集解くはうらやましけれ

 

温泉に浸かる猿をば見にきたり地獄谷にも春は来てゐて

 

雪積もる冬にあらねば飛び込みや潜水すらもしてゐる子猿

 

人の荷を狙ふやからはをらずして地獄谷はごくごく平和

 

根回しをせぬを無謀と言ふだらう人を信じて切り込む覚悟

 

濃霧にて飛行機飛ばぬアクシデント予約せしごとホテルに泊まる

 

宿泊が予定されてゐたるごと二泊三日が三泊四日に

 

昼過ぎに飛行機の欠航告げられて明日の休暇を職場に伝ふ

 

最果ての利尻から掛くるスマートホン職場に繋がる直ぐにつながる

 

若者の元気な声が光つてる利尻の街の夏祭りなり

 

カラオケが夏の祭りと若者は歌ひ飲みかつもの食ひにけり

 

氷河期の生き残りなる植物と覚えきれずよ花ガイドさん

 

ペシ岬フリータイムの半日にさざ波よする海を見てゐる

 

日本列島猛暑を伝へるニュース見る濃霧のここは表示もされず

 

飛行機の欠航信じられぬままANAの欠航証明書取る

 

蝉声の降りくる声も一段と息苦しき午後公園よぎる

 

夏草に負けじと草を引きたれば驚き慌てて羽虫が飛びぬ

 

目つぶしと目に刺さる夏の虫てんでに飛びて払ひもできず

 

数か所を虫に刺されたふくれ顔さらして数日どうにもならぬ

 

半日をぬくぬくふくるる布団たたけば秋日弾くるやうな

 

今さつき刈られたやうなリンダウを見捨てておけず拾ひつつゆく

 

登山道の草と刈られしリンダウの花を集めて花盗人かな

 

刈られたるミヤマリンダウ拾ひゆけば数十本の今日の幸福

 

これコナラクヌギスダジイマテバシイ山の獣に分けてあげたき

 

手のひらに転がしてみる山猫が落としてゆきし金色団栗

 

心地よく松葉透かれて立ちにけり名庭園の数々の松

 

三人の庭師一本に一カ月かかるとふ松葉のすぐり

 

庭園の紅葉の色の鮮やかさ八十八景池泉のめぐり

 


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