こもれび(4)
こもれび(4)
栗の実の季節である。1本の栗の木からイガイガの皮に大切に守られた栗の実がたくさん落ちている。拾うのが大変であるが、収穫は季節の実りとして大切に収穫したいと思う。栗の実はイガイガの皮に大切に包まれて育ってきたのだと、栗の木の親心まで感じてしまう。その大切に守られた栗の実が、飽食の人間に食われてしまうと思うと切ない。山の熊さんたちが食糧難ならば届けてやりたい気分である。みんなが争うことなく生活できる世の中になってほしいものだ。
く 1982
オレンジの体操着着て皆走る吾子の黄の靴目印に追ふ
仕事する女が所詮負ふなるか電車の中に連絡帳開く
負んぶしてと纏はる吾子をだましだまし園に送りて電車に走る
右足に子熊のごとくすがりしが夕飯待てず寝てしまへり
さざ波が及ぶがごとく雲が延ぶ 穏しき心地に春風そよぐ
我が言葉聞かずや先を駆けていく二歳の息子強き意志を持つ
快く預かりくれし老い母よ 水疱瘡の吾子実家に頼む
バックミラーに我を追ふ姿寂しもよ水疱瘡の吾子預け来て
蒲公英の綿毛は風に乗り来たり父倒るると知らせが入る
病院に駆けつくるとき父倒ると反芻しをり兄からの電話
襁褓すと嘆き給ひぬ農に生き休みたる事なき父のプライド
外出日に野周りをして来たといふベッドにをりて作柄を言ふ
保育園の七夕祭りクレーン車欲しと書きてありと夫が見て来ぬ
後ろ追ひ泣く吾子の手を振り払ひ耐へるしかない一人耐へゐむ
退院後まなく休まず旧盆の盆だな飾りは父の手になる
仕事する我と関係なき動作胎児はぐぐつと大きく伸びる
暮れなづみ人の帰りし公園に吾子との時間ブランコに乗る
け 1983
縫ひぐるみの熊を抱きしめ寝ぬる吾子寂しきかたち自我も生まれて
街路樹の落葉かさなり匂ひ良し道路清掃車吸ひ込みてゆく
抱き上ぐる手にあゑかに律動す嬰児の命きらきらとして
胸熱く嬰児を抱き授乳する口元やさしく愛らしきなる
弟生まれて三歳の息子の寂しさか我が手を求めて抱つこをねだる
与ふべき母乳を捨つる職場にてひそかに固くにじみ来るとき
職場には厚顔無恥を装ひて家事と育児に走り帰るも
隣家の時計早めに時を打つ湯ぶねに沈みくつろぎて聞く
ガラス食器の触れ合ふ音か熱き夜隣家の人も起きてゐるらし
一二時を過ぎて軒燈点しありもの寂しげに主待つ家
お父さんいつ帰るかと聞く幼と降り込められて窓を見やれり
腹這ひて這はむとする吾子八か月の幼の足は空を蹴りをり
ベビーカーの子がじいつと見る缶蹴りの子らの動きに緩急ありて
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