こもれび(1)

こもれび(1)

 長年短歌を作り続けてきたので、時々この辺りで歌集をまとめてみようかなどと妄想するのだが、まてまてと冷静なもう一人の私が言う。自費出版をした人の歌集をいただいても一過性でほとんど記憶に残っていない。私にとっては歌集を編んだとしてもほとんど読まれる可能性は低い。カーボンゼロを目指す世の中になって、いたずらにカーボンを消費するだけだ。ならばとまた考える。まとめてみたい、70歳というこの辺りで一区切りつけたいと思う気持ちを満足させるために、ブログに発表してみよう。変わりやすい気持ちではあるが、月1回くらいの割合で「こもれび」として 。長年心にためていた気持ちを、コロナ禍の緊急事態宣言発出中の今だから実行してみようと思う。

 あ 1975

黄羽二重(きはぶたえ)を樹海ラインに被すらし八幡平秋が来てゐて

 

冬ばれの穂すえ透かして金色に夕日輝く暮るるが惜しく

 

訪れし床の間に置きてある花梨ひとつ部屋静かなり

 

常盤木の輝き騒ぐひとところ見つつ人待ちベンチにをりぬ

 

当選の選挙事務所はどよもせりよそごとと見て足早に過ぐ

 

六月の照りきらめける伊豆の海エメラルドグリーンを君と眺めつ

 

朝まだきつゆ草活けし人ありて病室すがし気韻がこもる

 

い 1976

 

秋欲りて花盗人は手折りきぬ雑木林のうめもどきの実を

 

富士駅の豪雨の車中に迎えたる旅の朝も思ひ出とする

 

羽脱けてみすぼらしき鶏が何をか啄む落ち葉掻きわけ

 

きんせん花の大き花束薦に巻き背負ふ農婦とすれ違ひたり

 

遠近に新年のとき祝ふらし神楽太鼓に花火が爆づる

 

満開に咲きたるつつじ挿されをり裸電球に雄蕊光りて

 

熟れ落ちし桜桃見つむ出し抜けに答へがたき事問ふ人の前

 

基地たりし三十年よ帰化植物広ごるままに返還されぬ

 

雑草といえども植物豊かなり公園予定地愛しみて歩む

 

顔近く寄せて見せ合ふ児童あり通知表らしカバンを置きて

 

馬追の鳴くなる夕べ狂おしき食ひ違いたる電話のなかみ

 

一週間の別れ惜しみて見送れり振り返らぬ人と知りつつ

 

気に入りし赤きセーター見つければ憂鬱も晴れて君を思ふも

 

う 1977

 

うららかな長閑さに心満たされぬ会ふ人もなき札所を巡る

 

紫式部も道綱の母も籠りし石山寺一人歩めば寂しさまさる

 

基地跡の若芽の伸びし草むらに昼餉を取りに連れ立ちて来ぬ

 

姫紫苑と混ぢりて咲ける黄の花は河原さいこと去年覚えたり

 

工場の昼顔揺るるフェンスより雀せはしく飛び立ちにけり

 

さまざまに彩るお花スキー場となりゆくまでの高原の秋

 

退屈な会議に居りて向かい側の貧乏ゆすり激しきを見つ

 


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