小池光歌集『梨の花』を読む

2020.4.25

小池光歌集『梨の花』を読む
小池光はいつも多彩な詠み口で作品を楽しませてくれるが、本作品もその博識ぶりに感嘆の気持ちを禁じ得ない。歴史、文化、音楽から身辺詠まで、簡潔な語彙の中に込められた抒情は、調べないと伝わらない部分もあり、数十項目調べた結果思いがけない歴史の広がる作品も多かった。
ここでは小池の作品で特に、斎藤茂吉について詠んだ歌が多かったので、抽出してみた。
これらは茂吉的なもののエッセンス、茂吉の人生に出会った小池氏の共感の作品と読んだ。


斎藤茂吉を詠んだ歌 全部で14首。
・北平(ペイピン)にて茂吉が見たる爪長き宦官のことしばしおもいぬ p23

・うつくしきおとめの顔を愛したる斎藤茂吉七十年のいのち p54

・わが知らぬ南蛮啄木(けら)といふ鳥を茂吉うたへり四十九歳 p75

・老いの身の茂吉見つめし最上川いまのわれより三つ四つ若く p81

・ざくざくと佳(よ)きうたに会ふ茂吉『連山』春の香(か)のする両毛線に p113

・朝鮮の寺にをとめごの尼とあふ斎藤茂吉男(を)ざかりのころ p117

・牛橇(うしそり)といふものが茂吉の歌にありしづかにしづかにすすみゆきしか p145

・満洲を旅する斎藤茂吉より八十五年の時はながれて p157

・「口食(こうしょく)の官能(くわんのう)」ということばありしばし目とまる茂吉の歌に p157

・哈爾浜(ハルピン)に斎藤茂吉食ひにける「カウカサス的饌(てきせん)のシャシリック」 p211

・「火吹き竹」といふものを知る世代にて斎藤茂吉のうたにしたしむ p248

・茂吉の歌よみて土民の語と出会ふ「土民百万」うんぬんかんかん p277

・秘められし「満洲遊記」のおもしろさ茂吉散文の力量ここに p290

・「家居(かきょ)す」とふ動詞茂吉の歌に見えすなはちわれも一日家居す p334


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