歌集『桜橋』を読む


 2020.4.15

歌集『桜橋』を読む
歌集『桜橋』は 新倉幸子さんの歌集で、2020.3.26初版発行。
全体的に達者な読み手である。言葉遣いがなめらかで、一気に読んでしまった。その中の歌5首を紹介する。

① P24 断崖より海見下ろせば何事も許されそうな三陸の海

  三陸の海の青の色彩感。「何事も許されそうな」に込められた様々な思い・東日本大震災などを踏まえているかと思うが、その海の人語に尽くせない豊かさに、作者のこれまでの人生観を表しているような余情を感じた。

② P25 ほんとうの空といわれて空あおぎ深呼吸する智恵子のふるさと

  高村光太郎の『智恵子抄』の「あどけない話」の誰もが知る一説を踏まえた旅行詠。安達太良の山に向かって深呼吸、空の青さや広がりを感じ自然の豊かさや光太郎・智恵子の物語への作者の篤い思いが感じられ、好感が持てた。私もきっとここに行ったら深呼吸をしたい。

③ P56 炎天に蟻一匹を乗せたまま凌霄花は咲きのぼりゆく

  「凌霄花」のたくましい成長ぶりと「蟻」一匹に目をとめた詩情。「ジャックと豆の木」を彷彿とさせる表現にファンタジー感があって好きな歌。夏の暑さに負けないたくましさがいい。

④ P71 梟の風鈴はよし軽やかに森の話を聞かせてくれる

   「梟の風鈴」が「森の話を聞かせてくれる」と詩情豊かに詠まれていることに感動。集中で一番好きな歌。優しいファンタジー感が心地よく、風鈴の音が森の話だなんて素敵です。

⑤ P113 雪に折れし梅の古木が花咲かす折れたるままに無心に咲かす

   早春のまだ肌寒い季節にしかも折れた枝に梅の花が咲いている。「花咲かす」「無心に咲かす」のリフレインがそのいたいけな姿を更に協調して心に響いてきます。人生の哀れさをここに重ねていると感じた。


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