河野裕子の植物の歌10

続河野裕子歌集
河野裕子の植物の歌10

ヤ行

    矢車p131
驚くほど少しの量の灰になりし罌粟や矢車畑に鋤き込む


    藪枯しp45
わじやわじやと藪枯しどもがまだ茂り油光りす曇り日の坂


    夕顔p138
路地裏に夕顔咲かせて前の世は小さな無口の婆さんであつた



    桜桃(ゆすらうめ)p22
灯ともれる家にはわたしが待つことを必ず忘るな雨の桜桃(ゆすらんめ)



    ユッカp135
ユッカのやうに白く蒼ざめて子は立てり何が不安か言へないままに

    百合p43,52
白い大きな百合があたたか ヒューズ飛びふいに真暗となりたる家に


    よもぎp84
石臼ののどかな窪みの内にく春のよもぎの二摑みほど





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