河野裕子の「植物」の歌7

 2018.8.20

続河野裕子歌集 より
「植物」を詠んだ歌 7

ナ行
    茄子p71,93,108
母よりももつと老婆になるなどとチグハグに悲しく茄子畑に来ぬ


    鉈豆(なたまめ)p47
採光力あはき天窓の下に来て(なた)(まめ)のさやを剝き始めたり


    夏柑p57,73
鈍痛のやうな敵意に囲まれて夏柑の皮ずいずいと剝く


    菜の花p108
ひき出しに両手を入れればコトコトと列車動きゐる菜の花月夜


    にほひすみれp42
にほひすみての花の上にあるもやもやに触角のやうにうつすらと触る


    人参p84
家族はもう三にんしかゐないのに沢山に食はせるやうに人参をぬく


    ぬるの木p47
死んでゆく螢のやうな身の匂ひ分泌しをり雨のぬるの木
ぬるで

    葱p32,50,91,93,107
汁の実がすこし足らざり刃の反りをむき出しに下げて葱刈りに出づ


    ねこじゃらしp46,61
ありなしの風を感じてねこじやらしよごよごよごよごどの穂も動く

    合歓p125
合歓の咲く(たに)をひゆうひゆう登るなり南海高野線極楽橋行き
 

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