歌集「午後の庭」を読む 

 『午後の庭』 永田和宏歌集 を読む   1
                                       ( 2017.12.24 株式会社角川文化振興財団発行)

 2010年に作者は妻「河野裕子」を亡くして以降の531首の作品が本歌集に収載されているが、その中から特に心に残った歌を列挙してみた。後になってからわかることが多いことに共感するところがしばしばであり、心の整理をしつつの率直な気持ちに感銘した。(pは収載されているページ)


P29 家族としてありたる日々の短さをその後の時間が越えて行くのか

P41 昼のひとりの時間がとことんさびしくて君は病みにき癌よりも深く

P47 倖だつたと思へるきみとわれがゐてそれがやつぱり倖だった 

P51 朝の扉(と)に蝉の屍(し)を掃く日本の夏しか知らぬこれもいのちなり

P61 あなたとふやさしき言葉に呼ばれゐしあの頃あなたはわたしであつた

P62 息をするのが苦しいほどにさびしいとそのさびしさのなかに死ににき

P62 相槌を打ちくるる人のなき部屋が隅よりがらんと夕暮るるなり

P65 まつすぐにあなたが私になげかけてゐたはずの言葉 寒かつたのだ

P101 きみがもうゐないから自分で覚えなければと柵のむかうのししうどの花

P138 きみ亡くても生きてはゆける悔しさが哀しみに変はる頃の夕闇

P140 牛膝(ゐのこづち)にひなたとひかげの別ありてこの里道のヒカゲヰノコヅチ                                         
どの歌も追憶に限りない寂しさを感じる。切なく胸に迫るものがこみ上げてくるが、(P101)の頃から気持ちを整理し、前進しようとする姿勢が見えて救われる。

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