所沢出身の三ヶ島葭子 「書簡集」より


(その10)

葭子は 始め「女子文壇」「スバル」などに短歌・散文を発表していたが、親友の原阿

佐緒の紹介でアララギに入会、島木赤彦(本名 久保田俊彦)に歌を見てもらっていた。大

10年原阿佐緒と石原純との恋愛をかばったために、赤彦からアララギを破門された。

破門を告げられたその際の手紙の返信内容に、葭子の誇り高い精神の強さが感じられる

で人柄を読み取る一助にと、葭子の「書簡集」より引用してみる。

 大正101010日消印 久保田俊彦(島木赤彦)宛手紙より抜粋

先日は(以下2行省略)

あまり御丁寧な御言葉なので御手紙の旨がはっきりと承りかねるのでござい

ましたが、あまりつまらぬものばかり御目にかけてゐたのと、もう一つには

私が近頃友人原阿佐緒さまと近しくしながら真実を尽くさなかったことなど

が、先生の御心を傷つけた原因かとお察し申すのでございますが、それでし

たら全く私の至らなかったためでして、先生に一方ならぬ御心配をおかけ申

したことを今更何とも申しわけなく存じております。そしておつしやていた

だくべきことをおつしやていただきましたので、私としては却って先生の御

真ごころに接しえた喜びを以て、かげながら御健康を祈らせていただきま

。愚かなものによって害われた先生の御不快とお悩みとに比べては拙い歌

の見ていただけない悲しみなどかすかなものと存じておりますから、無感覚

を装ふのではございませんが、御放神のほど願上げます。何ですか又失礼の

ことを申し上げたやうな気もいたしますが、御挨拶いたさぬのも失礼と存じ

一寸お邪魔いたしました。 (注 葭子の手紙は毛筆のため、句点を適宜追加した。)


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