歌集『硝子の島』紹介 川野里子歌集

 歌集 『硝子の島』の紹介  (その1)
               川野里子      H29.11.10  短歌研究社刊

 新聞・雑誌等で種々の作者の活躍を目にするところであるが、本歌集をを読んで感動を深くしたので、感銘した歌をあげて、歌集『硝子の島』を紹介したい。(Pは掲載ページ)

①P23 エレベーターの上昇下降からうじて墜落せぬを暮らしといふか
②P25 重たいなあどおんと落ち込み立ちなほり自分を背負ひ歩きだすとき

 ①エレベータもまがり間違えれば落ちることもある。ここでは「からうじて墜落せぬ」日常と日常にある危険を暴き出し、日々の暮らしが保たれていることを信じる人の日常生活に疑問を投げかける。鋭い感覚だ。
 ②社会生活を送るとき、「どおんと落ち込む」ことはしばしばである。そこから立ち上がり歩き出すときのつらさ、体の重いことに共感できる。落ち込んだままになってしまいそうな私にはこの表現にもつらく苦しい。

 ③P61 爆風のやうに桜花は白く咲き三度目の原爆かくもしづけき
 ④P70 ゆふぐれに思へばオセロの白い石、原子力発電所島国かこむ

  ③(2011..3.11)桜咲く春、福島に3度目の原発が落とされたのだ。福島の原子力発電所の事故は3度目の原爆だったのだと、作者に教えられ事故だと片付けられない問題を含んでいると認識させられた。この表現は動かしようが無い。今も避難者数万人も存在する。
  ④原子力発電所が海辺に設置されている。それはオセロの白い石のように配置され、白から黒い石へいつひっくり返るかまたいつ事故が起こるかわからない。そのとき島国の人は逃げようが無いのだ。

 ⑤P108 星一徹ひつくりかへす卓袱台を台詞なくつねに拭きゐし明子

   ⑤セクハラ問題に揺れる現代に繋がる1首。服従をする性としての明子、何も言わず言えず、忍従するばかりである。現在も女性の地位は変わったとは言えない状況である。女性の地位の低さは世界で110位以下とか。どうしたらこの国は変わるのだろう。変われるのだろう。

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